仕事をはじめようか 大事なお姫様の笑顔を守る為
「黒いのは白いのとお隣のお嬢ちゃんがどうにかするみたいだから。」
自分は、もっと厄介な別の物の始末をしようか 手を出すのなら、相手を選べとしっかりと教え込んでおこう
番外編 死神の裏事情
最近は黒でも結構仕事着のような大きなマントと丈の長い服を着ることなく、楽で季節に合わせた格好をしていたが、今日は仕事なのでいつもの新一が嫌う服を着る。 そして、いつも物騒だから持ち歩くなと言われる鎌も持つ。 だって、今日は仕事だから。人の命を奪い、迎えて連れて行くのではなく、別の個人的なお仕事。 今夜は怪盗キッドの予告日。そして、お隣さんの実験日。 「迷惑な客を一つずつ始末しますか。」 怪盗が動き、お隣さんと迷惑な二人を回収する。その後すぐに、怪盗が来るであろうあるビルの屋上へと先回りする。死神には移動手段は人とは違うので、先回りは簡単だ。 「さて、そろそろ出てきな・・・。」 空気がよどみ、空間がゆがみを見せ、バードと同じように黒い陰が現れた。 「悪いが、あいつらに手出しをさせるつもりはないからね。」 今のうちに手を引いてもらえないか?と優しく問いかけたが、引く気は無いらしく、反対に威嚇する。 「そう・・・。お前が大人しく引けばよかったが・・・。やっぱり馬鹿みたいだな。」 馬鹿といわれて、さすがに相手も起こったが、冷える空気とバードの冷たい目。そして、バードから感じるその気配と力から、核の差というものを知ら占められる。 あきらかに、自分には適う事のない、上級者。 「な、何者だ・・・。」 「人に問う前に自分から名乗るべきだと思うぜ。なぁ、グロウラス。」 目を細め、その目を見て全身から動きを封じられる。 「悪いが、帰ってもらおう。怪盗キッドの命は、こんなところで終わらない。まだ、寿命は来ていないのだから。」 死神は、とくに下級者ではそそのかして魂を喰い、力を手に入れる為に寿命よりも先に命を落とさせ、偶然が重なった事故に見せかけることがよくある。 その為に、力のある人間を選ぶ事もある。 怪盗キッドや工藤新一は生きる気持ちが強いことと、本来持つ力が強い事で、彼等にとってはご馳走であるのだ。 「大人しく帰ってくれる気がないようだから、強制的に帰ってもらおう。もうすぐ、ここに二人とも着てしまうのだからな。」 その前に処理してしまうに限る。 バードは持っていた大きな鎌を振り上げる。 「もう、ゲームはおしまいだぜ。・・・そうだな。昨日やったゲームだったら、チェックメイトってところだな。」 空気もろとも、黒い陰を鎌で真っ二つに切る。 そして、生じたゆがみに黒い陰は吸い込まれて行き、あとにはバードだけが残った。 「あとは、あの男が始末するさ。」 現在死神世界を支配する自分の血族。 「さて。彼等のせっかくの密会を邪魔したら、また怒られそうだ。」 白いのは短気だから。 お隣さんの実験の具合はどうだろうかと、ふよふよと夜空を移動し始めた。 その後、二人はそこに現れ、何事もなく家に帰ってくるだろう。 そして、家に帰り、仲良く夜を過ごすのだ。 「さて。今日は何処で休もうか・・・。」 お隣さんは忙しいし、あの二人もいちゃいちゃやっているし、一人寂しく考える。 「とりあえず、今後の情報収集でもしておこかな。」 馴染みの悪友である仲間にメールを入れて、ノートパソコンの電源を落とした。 あの二人がどうなったかなど気にする者はいなかった。 悲鳴が聞こえた気がするが、あの二人の耳に届く事はない。
次の日。 「あ、灰原。」 「哀ちゃん。ちょうど良かった。」 朝食一緒にどうかと思ってたんだ。と、かなりご機嫌の様子。 「うわ。昨日はあまり気にしてなかったけど、やっぱりまだいるつもりだな、真っ黒!」 「・・・はぁ。」 溜息一つ。久々に反抗してこないバードに不信に思う快斗。 何気に言い合うのは結構楽しかったのかもしれない。 「おーい、どうした?」 「・・・そういえば、昨日はあまり見かけなかったわね。」 「なんか、へんなものでも喰ったのか?」 「黒羽君じゃあるまいし、彼は基本的に食べなくても死なないわよ。」 「うわ。ひどい。俺だってほいほい落ちてるものなんて食べないよ。」 「どうかしらね。」 そんな言い合いをちらりと見て、また溜息をつくバード。 「本当に、どうしたんだ?」 さすがに心配になってくると、小さな声でバードは言った。 「・・・昨日は皆が皆それぞれの事でいっぱいで、寂しかったなぁて。」 「「「・・・。」」」 そういえば、昨日は予告以後はあまり話をした記憶がない。 いつもならばしつこくて鬱陶しいぐらい会話に入ってきたり邪魔する男だ。 「しみじみ、悲しいなぁと思いながら寂しく一夜を明かしたんだ。」 「そう。」 「・・・。」 「・・・。」 なんだか哀愁が漂っているというか、よろよろ〜っと出て行くバード。 「なんだか、そうとう落ち込んでるような気がするんだけど。」 「そうね。あの様子は只事じゃないわ。」 「そういえば、昨日あいつ何かあったのか?」 何があったかなんて、自分達の事をしていて全然知らなかった。 「つい実験に夢中で。」 「俺は新一・・・。」 「言わんでいい。」 顔を紅くして快斗の口を手で塞ぐ。 「今更だけど、私達和んでいる場合じゃなくて、彼が死神という事をどうにかしないといけないし、まぁ害がないから気にしてなかったのだけど。」 「あいつは何でも知ってるけど、俺たちって以外と何も知らないよな。」 つまり、昨晩の出来事も知らないということで。 実は、何の用意もせずに死神世界へと送ったので、体力消耗が激しくてふらふらしているのだが、彼等は知る事もなく。 その日、しばらく様子を見ていたら、次の日にはすっかり元気になっていたバード。 彼等にはまったくもって意味が不明で、何がいけなかったのかと首をかしげるばかり。 だが、戻ってきたいつの間にか定着した日常を見て、やっぱりこれだよなと納得する。 リビングでは今日も快斗とバードの口げんかが響く。
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