「し、新一?!何があったの?!」 買い物から帰ってきた快斗は、買い物袋をどさっとその場に落として『新一』の元へ近づいた。 「なぁーう。」 抱き上げたそれ。 「ねぇ、新一に何したの?!」 人の姿をしているが、言葉は猫語でわからず、耳や尾が生えている。 原因であろう少女を見ても、何があったのかわからない。 「とりあえず、説明はしてあげるよ。」 背後に立っていた竜が苦笑しながら快斗に近寄った。 好きだから2 要約してみれば、また変な依頼があったのだ。 猫を人の言葉が話せるようにして、人の姿になれる薬を注文してきたのだ。 それを蓮が哀に言い、約束の一週間後の今日に持ってきた。 しかし、また前回同様にトラブルからぶつかり、薬を頭から被った新一。 猫を人の姿人の言葉であるので、その逆でなのか、作用が足りなかったのか、反猫になったのだ。 厄介なことに、猫語で何を言っているのかわからない。 とりあえず、最初はかなり威嚇して怒っていたので、困ったなぁという感じだった。 しかし、人がこうなるという事は考えてもいなかったので、解毒剤はなく、三日だけと言われていたのでその効果を試した。 すでに、地下室にいる猫は元に戻っているので安心していたが。 こうなってはとりあえず三日待つしかない状態。 「もう、どうしてそんな仕事請けてくるんだよ。」 「面白そうだし。それに、彼女も実験費がタダならやるって言ってくれたし。」 実験費用は依頼人持ちらしい。 聞けば、依頼人はとても猫を大切にしていて、いつも話ができたら良いなと考える夢見がちな人らしい。 そのくせ、裏で危ない事やら法に触れるようなことを普通にする人らしい。ま、それは言ってもこの人達の関係者なのでどうでにもならないが。 「それで、新一が猫。」 大きな猫は快斗の腕の中でうにーっと擦り寄ってくる。それがちょっと可愛く見えた。 「解毒剤、出来るようなら頑張るけれど、とにかく三日、見張ってて頂戴。」 猫として、気ままに出かけられても困るからと言われて、確かにそうだと考える。 半分女の子の次は半分猫と忙しいなと思うが、今回は可愛いのでいいかもしれない。 大きな蒼い瞳がきらきらと輝いていて、我慢できるかどうか怪しいが。 「ま、これだけの効果があれば問題ないだろ。」 「だから、はい。」 まだ、残ってたらしい。家に取りに帰ってそれを渡す哀。 それを持って立ち去った蓮。 「・・・私も家の片づけをしてくるわ。」 と、二人を残して去っていった二人。 がしがしと手で快斗を叩いて呼ぶ新一。 「なぁーう。」 「どうしたの?」 ソファの上に新一を座らせて、キッチンへと入る。 その間、大人しくちょこんと座っている新一に、可愛いなとまた考えつつ、昼食の用意を急いだ。 といっても、猫になってはどうなるかわからないのでミルクを程よい温かさに温めたものだが。 「はい。」 前に差し出すと、顔を近づけて飲もうとする。そういえば猫だったと思い出し、新一の動きを止める。 振り向いて首を傾ける新一に、おいでと言う。 素直に従って近づいた新一の顔の高さにそれを持って、飲ませた。 飲み終わったら、眠くなったのかとろんとした瞳。 本当に猫だなと思いながら、眠そうにしている新一を抱き上げて部屋へと向かう。 いくら中身が猫に近くても、身体は新一のままだ。こんなところで寝ては風邪を引く。 だから、布団まで連れて行ったのだ。 ぎゅっと快斗にくっついて穏やかな寝息を立て始める新一。手は快斗の服を攫んで離さなかったので、片付けはあとにするかと、快斗も新一を腕に抱いたまま布団の中に入って眠った。 つかの間の幸せな昼寝の時間。 何かが自分の頬を舐めている。 なんだろうと目をあけると、黒い猫のドアップがそこにあった。 「わ?!あ、新一・・・って、どうして?!」 そこには人の姿も欠片もない黒い猫がそこにいた。眼は青い瞳で新一と同じだ。そして、腕の中には新一の姿はない。 「もしかして、新一?」 猫に聞いてみると、返事をした。どうやら、薬が効いて完全に猫化してしまったらしい。 新一が寝ていたであろう場所にある服。息苦しくなってもぞもぞと這い出て快斗を起こそうとしたのだろう。 この身体では何するにも不便だろうからわかるが。 その後、抱き上げて下に降りて、哀に説明し、その日一日を過ごした。 起用に丸くなって眠る新一の姿を見ると、猫だなぁと思うが、戻ってくれないと困るなと思いながら、明日が来るのを待つのだった。 猫の新一を腕に抱いて眠った。 目を覚ますと、そこには『新一』がいた。 元に戻ったんだと思うと同時に、気付いて固まった。 新一は一切何も身に着けていないのだ。 直視できない。勿体無い気がするが、手が出そうで怖い。 そろりと布団から這い出して下着と服を取り出して新一に着せた。 それにしても、本当に細くて白い肌だよなと思いながら、すやすやと気持ち良さそうに眠っている新一の寝顔を堪能していた。少しだけ幸せ気分を味わっていた。 しかし、目を覚ました新一が快斗に気付き、蹴り飛ばすまでの間だけ。 「ま、戻ってよかったわ。」 「そうじゃなくて、そんな怪しいもの作るなよ。」 「私は依頼されただけよ。費用もタダだし。」 「こっちも依頼されたものだしね。」 「断れ。」 「そうだよ。」 復活してから少し不貞腐れている。ところどころ記憶がないらしい。 とりあえず、今は日常が戻って平和だということで。 しかしすでに、彼女が新たな薬品の実験をしていたりして、また巻き込まれる可能性は充分にあるのだった。 |