今日は客が来る さて、どうしたものか・・・ 一人の青年が一枚のカードを持って、考える カードはタロットのようで、タロットではないもの 絵柄も、意味もまったく違う 本来22枚である大アルカナであるが、彼が持つものは24枚 その中の一枚 14番目のナンバーが書かれたカードの名前は 時の流れの変わり目を現す、『時の使者』 『運命の輪』と同じであって違うもの 「何が変わるんだろうねぇ。楽しい事だったら、歓迎だけど。」 そろそろ、客が訪れる頃 ノックの音が聞こえる
カードの導きのもと
静かな人気のない倉庫で、繰り広げられる争い。 高見の見物をしているわけではないが、成り行きを見守る義務もあると思うので、少し遠い建物の屋上から、仕事で動く彼等の観察をしていた。 「どちらが破壊者で、どちらが生贄か・・・。三組だから、魔人か守人・・・戦士もありえるかなぁ?」 繰り広げられる銃撃戦。 一つはCROWと言う名の、最近代替わりをしたが、その長が頭の切れる冷酷な魔物と知られ、有名な者。 一つは通り名がその紅い瞳で紅眼と言われ、動きの素早さと獲物を狙う姿、そして身のこなしから、獅子と呼ばれる放浪暮らしの殺し屋。 一つはあまり名の知れぬ、CROWと取引を申し入れ、そして紅目に頭を殺させて失脚させようと企む者。 紅目が銃で狙いを定めたが、只者ではない烏は先に狙う視線を感じ取って除けた。 まるで、烏が光物に反応するかのような、動き。だが、光物に突っ込むなんて無謀な事はしない、とても賢い烏。 すぐに、目の前の取引を持ちかけた男の策略だとわかった。なので、交渉決裂で容赦せずに行こうと思った。 その時に、ちょうど通りかかった、青年の声。声を潜めて陰に隠れる三人。 一瞬だけ烏は目線があった。だが、相手はすぐに視線を戻して走っていった。 聞こえる微かな声を拾い、口元を見て、急がないとという言葉がわかり、どうやら一般人だと判断する。 こうして、邪魔がなくなって問い詰めると、違うと言い訳をする男。 さすがに、反撃をした烏の実力を見て、そして何の感情もなく、ただ冷たく突き刺さるようなその眼で見られて、おじけずいたのだろう。 紅目は関係がないと言い張ったのだった。 それによって、紅目にとっては交渉決裂なので、仕事を切り上げるつもりだ。 だが、裏切り者に多少の制裁を加えるつもりで、狙った。 烏が上手く交わして当たることはなかったが・・・。 その後、紅目は引き上げようと、面白くもない仕事だと背を向けたとき、いつの間にか闇に潜んでいた烏が獲物を追い詰めた。 「逃げる気か・・・?」 「裏切られた以上、交渉決裂だ。」 「こちらも、すでに交渉決裂。だが、狙った以上、容赦しない。」 すでに殺されては居ないが、重症を負わされた男をそこに残し、二人の戦いが始まったのだ。
逃がしたかと、舌打ちする。 まぁ、重症だろうから、しばらくは動かないだろう。 今は、交渉を持ちかけてはじめから潰すつもりだった愚かな男どもの集まる組織を、どうにかする事を考えよう。 「俺だ。・・・交渉決裂。あっちが先に仕掛けた・・・。ああ、その通りだ。すぐに調べてくれ。」 二度と同じ事を起こさないように、今のうちに潰しておく。 右腕とも言う、信頼できる仲間に連絡を取り、後のことを任せる。 今日は、疲れたから、ゆっくり休もうと決め、タバコに火をつけた。 その時、背後に感じた気配に驚いた。 それは、先ほど走っていった青年のもの。 「・・・あんた・・・、烏か・・・。」 どうやら、ばればれのようである。どうしてばれているのかはわからないが。 「通報があって、警察が来る。帰るなら、急いだ方がいいぞ。烏はとっくに巣に帰る時間だ。」 そして、腕の怪我はさっさと手当てしないと、後々どうなっても知らねーぞと言い、青年はどこかへ歩いて行った。 それと同時に、どこか遠くの方で聞こえてくるサイレンの音。 「確かに・・・。烏はとっくに帰る時間だ・・・。もう、ここにも用はない。」 まだ寝ている男は捕まるだろう。 だが、自分やあの紅目は捕まるような証拠は残さないだろうから、またどこかで会えるだろう。 「それにしても、変わった奴だ・・・。なぁ、探偵君?」 最近はあまり表に出てこないが、表以上に闇で知られている探偵。 烏は自分のやっている事の事情もあり、知らないわけがなかった。 「怪我がなかったら、捕まえられていたか・・・。」 犯人だろうと殺させない。怪我をしていたら、まずは助ける心優しい探偵。 だが、それが時には命取りとなるというのに。 「やっぱり、変わった奴だ・・・。」 タバコはもう吸う気にもなれず、靴で火を消して、その場を後にした。 サイレンの大きさと、動かない気配から、ここについて男を逮捕しているのだろう。 あとは、あの男が作り上げた組織を壊すだけ。 「全て、探偵君に踊らされているようだ・・・。」 烏は闇に紛れながら、巣へと帰る。
眼がかすむ・・・。 ちらりと、視界に入った、先程ここを通過したはずの青年の姿が、紅眼の動きを遅らせ、銃弾を二つ程うけてしまった。 あの眼は、自分がかつて愛した人と同じ、蒼い眼。 彼ほど深く、そして輝きを見せるような蒼い眼ではなかったが、蒼が紅眼の動きを縛り、判断が鈍ったのだ。 もしかしたら、天国で彼女がこれ以上はやめろと警告をするかのようにそこにいた青年。 なんとか逃げられたが、このままでは不味いだろう。 少々、血が流れすぎたかもしれない。それに、致命傷とまではいかないが、深い傷が、どんどんと紅眼の血液を減らしていく。 このまま死ぬのなら、それが運命なのかもしれない。だが、まだ自分の目的は終わっていないから、未練を残してしまうのだろうなとのん気に考えていた。 かつての自分なら、恨みの気持ちから何が何でも生きようとした。 「・・・疲れた・・・って事か・・・?」 そんな事で逃げるのはよくないだろうが。 「・・・きっと、会えないだろうな・・・。」 間違いなく地獄に堕ちるだろうから。天国に居る彼女とは、二度と会えないかもしれない。 そんな弱気になっていたから、感覚が鈍っていたのかもしれない。 大丈夫かだなんて、声を駆ける人間がすぐ目の前に来ていたのに気付かなかったのだ。 「お前・・・。」 「いきなりお前かよ。失礼な奴だな。で、まだ大丈夫なのかと聞いているんだが?」 「・・・。」 返事するのもしんどいので、ただ不思議なあの蒼い瞳の青年を見ていた。 「無茶しているようだな。」 さてどうしたものかと、考える青年。 最初はわからなかったが、よくよく思い出してみれば、彼は自分が噂でよく耳にする人物だった。 「・・・捕まえにでも、来たのか・・・、探偵小僧。」 「つくづく失礼な奴だな。白いどっかの馬鹿と同じだ。」 なんだか、ちょっと機嫌をそこねた探偵。だが、何故か命令されて動くなと言われて、なされるがままに手当てをされた。 「・・・捕まえないのか・・・?」 それに、最初に何処かへいったはずの探偵がどうして戻ってきたんだと言えば、通報があって、警部から連絡があり、近かったから先に到着したと話した。 その証拠といわんばかりに聞こえてくるサイレンの音。少し遠いが間違いはない。 「あそこから離れているからなぁ。今頃おねんねしているおっさんつれて警視庁に戻ってるんじゃない?」 ひょうひょうと言ってのける探偵は、確かに今まで興味もなく聞き流していたが、聞くとおり、少々めちゃくちゃなところがあった。 「ここに置いとくのも迷惑だろうし、いろいろと物騒だろうし。どうしたものか・・・。」 とりあえず立てるかと言われて、さっきよりは怪我の痛みはましで、血も止まったために辛うじて動く事は出来た。 「じゃぁ、家に来い。どうせ家ねーんだろ。なら、来い。俺もこんなところで一晩明かされたら、迷惑だ。気になってしょうがない。わかったか!」 なんともめちゃくちゃだ。いいのかそれは。 「ほれ、立て。どうした?警察連れていかねーぞ?連れて行って欲しいなら別だが?」 目的は知らないが、会いたい人がいるのなら、それを終わらせてから警察行けと言う。 どうやら、中途半端なところから、独り言を聞かれていたようだ。 なんだかんだいって流されつつ、がっしりとボロボロのコートの袖とつかまれて、連行のような形で家まで連れて行かれた。 ここを立ち去る前に、探偵がとある方向を何か考えるように見ている事には気付かなかった。 それだけ、まいっていたのか、弱気になっていたのか。 連れて行かれた先は工藤邸で、次の日には何故か朝食をご馳走になってしまって、会いに行くなら会いに行けーと追い出された。 確かに、調子は昨日より良かったので動けない事はなかったが。 なんだか、可笑しな探偵にあったなと、はじめて何も興味のない自分が興味を示した人間。 とりあえず、彼が言うように墓参りでも行こうかと考えた。
それにしても、気付かれていたとはねと、苦笑する。 双眼鏡で事の次第を見物していた自分を、見てくる探偵の目。 あれは、しっかりとここに自分がいることを気付いていた。目線があったような気もしたから間違いはないだろう。しっかりと存在を見られた。 まぁ、自分が何者かまではわかっていないだろうが。 しかし、彼が『時の使者』が示した、流れを帰る者だとはちょっと驚きだ。 「確かに、あの探偵君はいろいろと変わっていると思うけどね。」 さて、今日の運命はと観たカードには、『探求者』と書かれていた。 「確かに、興味がわいたから、調べたくなるけどね・・・。いっその事、仲介人として、探偵君も仕事で引き込もうかな?」 結構楽しいかもしれないと次の仕事の準備をするのだった。
あとがき 三人一挙公開編? |